空を泳ぐ魚
ふと空を見上げると、魚がいた。
一匹じゃない。数百匹、いや、数千匹。青やオレンジや黄色の熱帯魚たちが、雲の間を縫うように泳いでいる。
最初は飛行機か何かだと思った。でも違う。確かに泳いでいる。ひれをゆっくりと動かしながら、どこかへ向かっている。
周りの人は誰も気づいていない。スマホを見て歩いている人。信号待ちでぼーっとしている人。誰も空を見ていない。
声をかけようとした。「見てください、魚が」——でも言葉が出なかった。言ったら消えてしまう気がした。
夕方の光が魚たちの鱗を照らしていた。虹色に光る。きれいだった。怖いくらいきれいだった。
気がつくと、魚は消えていた。空にはいつも通りの雲だけがある。夢だったのかもしれない。でも、首が痛い。ずっと上を向いていたから。
あの魚たちは、どこへ行ったのだろう。