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2026.01.31

ケンタとナナミ

交際2年目 / いつものカフェ

ケンタ(29) 営業職。最近、仕事が忙しくて会えていない。
ナナミ(28) 看護師。夜勤が多い。ケンタとはすれ違いが続いている。

ケンタは別れ話をするつもりだった。

もう3週間、まともに会話をしていない。LINEも事務連絡だけ。「今日何時に帰る?」「遅くなる」。それだけ。

好きじゃなくなったわけじゃない。でも、このまま続けても意味がない気がしていた。

いつものカフェで待ち合わせた。ナナミは少し遅れてきた。「ごめん、電車」と言いながら座る。ケンタは「いいよ」と言った。

コーヒーを頼む。沈黙。何から話せばいいか分からない。

「あのさ」とケンタが切り出そうとした時、ナナミが先に言った。

「私、来月から日勤に変わるんだ」

ケンタは言葉を飲み込んだ。「え?」

「師長に相談したの。夜勤ばっかりだと、大事な人と会えないからって」

ナナミはコーヒーを見つめていた。ケンタも見つめた。

「給料は下がるけど。でも、このままだと、ダメになると思って」

ケンタは何も言えなかった。自分が言おうとしていたことを思い出した。別れ話。ダメになると思ったから。でも、ナナミは続けるために動いていた。

「ケンタは? 最近どう?」

ケンタは口を開いた。言葉が出てこなかった。代わりに、手を伸ばした。テーブルの上のナナミの手に触れた。

「俺も、もうちょっと早く帰るようにする」

ナナミは少し笑った。「無理しなくていいよ」

「いや、無理じゃない」

二人はしばらく何も言わなかった。コーヒーが冷めていった。

「もう1杯頼む?」とナナミが聞いた。

「うん」とケンタは言った。

別れ話は、しなかった。

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