カイトとユキナ
傘を返す日 / 会社のエントランス
カイト(27) 営業部。先週、雨の日にユキナから傘を借りた。
ユキナ(25) 経理部。カイトとは顔見知り程度の関係。
ユキナ(25) 経理部。カイトとは顔見知り程度の関係。
先週の金曜日、急に雨が降った。傘を持っていなかった。
エントランスで途方に暮れていると、声をかけられた。
「傘、使いますか?」
経理部のユキナだった。名前は知っていた。でも、話したことはほとんどなかった。
「いいんですか?」
「私、折りたたみ持ってるので」
ありがたく借りた。ビニール傘。でも、なんか特別に見えた。
月曜日。傘を返すために経理部に行った。
「先週はありがとうございました」
「いえいえ、役に立ってよかったです」とユキナが笑った。
それだけで終わるはずだった。でも、なぜか話が続いた。週末の話。天気の話。仕事の話。
「良かったら、お礼にランチでも」と言っていた。自分でも驚いた。
ユキナは少し考えて、「いいですよ」と答えた。
金曜日、一緒にランチに行った。近くのパスタ屋。話してみると、共通点が多かった。出身地が近い。好きな映画が同じ。
「もっと早く話せばよかったですね」とユキナが言った。
「本当ですね」とカイトが答えた。
ランチの後、「また行きましょう」と約束した。
雨の日に声をかけてくれて、本当によかった。カイトはそう思った。