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2026.01.31

ケイスケとユリ

転勤前夜 / 二人の部屋

ケイスケ(31) 商社勤務。来月から福岡に転勤。
ユリ(29) 看護師。東京の病院で働いている。同棲3年目。

転勤の辞令が出たのは、先月のこと。福岡支社。2年間。

ユリには、すぐには言えなかった。言ったら、何かが変わってしまう気がした。

「話がある」とケイスケが切り出した。夕食後、二人でソファに座っていた。

「何?」とユリが不安そうな顔をする。

「来月から、福岡に転勤になった」

沈黙。ユリは目を見開いた。それから、うつむいた。

「いつ分かったの」

「先月」

「……なんで言わなかったの」

「言ったら、どうなるか分からなくて」

また沈黙。時計の音だけが聞こえる。

「どうするの」とユリが聞いた。

「どうしたい?」とケイスケが返した。

「逆に聞いてるの」

「俺は、別れたくない」

ユリは顔を上げた。目が潤んでいた。

「私も」

「じゃあ、遠距離する?」

「……できるかな」

「分からない。でも、やってみたい」

ユリは少し笑った。「ケイスケらしいね」

「どういう意味」

「分からないけど、やってみたいって」

二人で笑った。答えは出ていなかった。でも、一緒にいたいという気持ちだけは確かだった。

「2年、長いね」とユリが言った。

「月に1回は会いに来る」とケイスケが言った。

「嘘。仕事忙しいでしょ」

「頑張る」

その夜、二人は遅くまで話した。明日から何が変わるのか、まだ分からなかった。

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