キヨシとトモエ
結婚28年目 / 河原の散歩道
キヨシ(55) 定年まであと5年。最近、休日が増えた。
トモエ(52) パート勤務。息子が独立して、家が静かになった。
トモエ(52) パート勤務。息子が独立して、家が静かになった。
日曜日の朝。二人で散歩に出た。
息子が家を出てから、休日の過ごし方が変わった。昔は子供中心だった。今は、二人だけ。
「いい天気だね」とトモエが言う。
「うん」とキヨシが答える。
河原を歩く。犬の散歩をしている人たち。ジョギングをしている人たち。
「うちも犬、飼う?」とトモエが聞いた。
「いいかもね」
昔は、こんな会話をする余裕がなかった。仕事と子育てで精一杯だった。
「最近、楽しいね」とトモエが言った。
「急にどうした」
「いや、なんか、昔に戻ったみたいで」
昔。付き合い始めた頃。二人でよくデートした。映画を見て、ご飯を食べて。
「確かに」とキヨシも思った。「子供がいた時より、二人の時間が増えた」
「寂しくもあるけどね」
「まあね」
でも、悪くない。28年一緒にいて、まだ一緒に歩ける。それはすごいことだと思った。
「来月、旅行でも行かない?」とキヨシが言った。
トモエは驚いた顔をした。「珍しい。あなたからそんなこと言うなんて」
「たまにはね」
トモエは笑った。「じゃあ、温泉がいい」
「いいよ」
手を繋いだ。何年ぶりだろう。少し照れくさかった。でも、悪くなかった。